うまりずまの純情レポート コアラ -2012/06/28(Thu) 13:28 No.4716

 

台風情報画面  しかし今年、沖縄の梅雨は長かった。
4月28日に早々と梅雨入り宣言したのだから6月上旬でさっさと梅雨明け宣言をしておけば、
 ほぉこりゃなかなか気っぷがいいじゃねぇの、こっち来て寿司でもつまみねぇ、そのマグロは近海モノだってよ、とか言ったかもしれないのに、6月20日を過ぎても前線はまだグズグズしている。

  梅雨さえ明けてくれれば残った心配ゴトは台風と引っ込まないおなかの肉だけになるのが、こうなると梅雨と台風とおなかの肉とを同時に心配しなければならなくなった。
  そしてほれ言わないこっちゃない。台風4号5号だよ。しかし何でまた今年は立て続けに沖縄近海を通過するんだかね。 これじゃいつ縄跳びの輪に飛んで入っていいのか分からない小学生の気分だ。
雨の那覇空港 羽田に向かう当日の朝までネットの天気予報サイト3つを食い入るように眺めていたものの
「沖縄地方は雨の確率80%」
「宮古島は曇り時々雨」  みたいな暗い予報ばかりですっかり気持ちはブルー。
  午前6時。直前まで悩んでいた重たいフィルム一眼レフカメラは出発間際に泣く泣くキャリーバッグから下ろすことにした。 なぜ梅雨は明けないか〜(涙)。
  那覇空港は天気予報通りに雨だった。
  着陸した飛行機の窓から雨粒が後ろに流れていくのを見てさらに気落ち。 トドメは乗り継いだ那覇発宮古島行きANA1723便CAの明るくさわやかなアナウンス「到着地の天候は曇りです」…ううう。
「金吾」赤魚の甘酢あんかけ とりあえず宮古島空港に到着。
レンタカーをピックアップしてR78沿いにある『金吾』で遅めの昼食をとることにした。 赤魚(あかざかな)甘酢あんかけ定食。これマストアイテム。
ホクホクに揚がった魚の白身にほど甘いあんを絡めるとどこまでもご飯がススムくん。  誰も見ていなければ皿までペロペロ舐めとりたい。
  しかしこんなに定食の量は多かったか?
それとも訪れなかった2年間で私の胃袋自体が縮んだのか。 (そこ!「加齢による基礎代謝量の減少でしょう?」とか言わない)
東平安名崎の灯台への道
 「ごちそうさま!相変わらずおいしかったです」
とお礼を述べて、膨れた腹を撫でさすりつつR78をそのまま直進して東平安名崎に向かった。
午後3時。
どう思います?この空。

前日まではザーザー降りだったと聞いたけれど、どう見てもこれは梅雨空ではない。
そこで勝手に《梅雨明け宣言》発令。
ときに2012年6月22日午後3時、かくして沖縄地方はテキトーに梅雨明けを迎えたのであ〜る!


灯台参観禁止の張り紙  東平安名崎に行ったのは灯台に上るためだった。 ところが何かの理由で「大変申し訳ありませんが○○○○の為当分の間参観を中止」していると説明している張り紙があるのだが、たぶん赤いマジックで書いたのだろう、肝心な部分は色が飛んじゃってどうしても読み取れない。 4文字分ぐらいだったけど何だろう。 「怪獣退治」。
「怪獣退治の為当分の間参観を中止」?
まさかね。ウルトラマンじゃあるまいし。
  あ、もしかして「捲土重来」?あり得るね。
石垣島には負けたくない。 あるいは「永久脱毛」だろうか? 「永久脱毛の為当分の間参観を中止」(笑)
「乱離骨灰」「臍下三寸」「想像妊娠」「勃起不全」…四文字熟語の連想がどんどんシモの方に流れたところで誰か止めてください(笑)。
  100段の階段はつらかったけれど、灯台の上から眺める太平洋は茫洋として心休まる風景だっただけに、上がれなかったのは残念。
  そういえば岬の入り口に飲酒運転注意の看板があるでしょう。 そこに立っていた宮古島まもるくんは異動になったらしく姿が見えなかったですよ、あじまーさん(業務連絡)。
  それに東平安名崎に向かうには、これまで住宅が建てこんだ路地を抜ける必要があったけれど、立派なバイパス道路をつくっていました(現時点、未通)。
『島バル PURAVIDA(プラヴィダ)』のグラス 夕方ホテルにチェックイン。
受付を担当してくれたのはまつ毛が長いサトルくん(仮名)だった。
「お部屋は5階になりますぅ〜」「朝食会場のご説明をさせていただきますぅ〜」とやたら語尾が上がる子だ。  途中のコンビニで仕入れたビールを開けつつ荷ほどきをする。 もうそろそろ午後7時というのに空腹感がわいてこない。
『金吾』で食べた昼食が遅かったせいだろうか。
もっともこの夜はどこも予約していなかったのだ。
  『島おでん たから』でテビチ入りのおでんをちょいとつまみながら泡盛でもいいし、目についた居酒屋で一献傾けながら、今年も宮古島に来ることができた幸福をかみしめてもいい。 …ちょっと待てよ。気になる店が一軒あったのだ。  まだ《食べログ》にクチコミさえ掲載されていない店なのだが、なぜか私の第六感がビビッと反応したのだった。
  それがここ『島バル PURAVIDA(プラヴィダ)』  正解だったですよ。
まず前菜でいただいた《豚肉のリエット》の抜群の旨さにぶっ飛んだ。 聞くと島で育った豚の色々な部位(レバーやモモ肉や背脂など)を混ぜて、およそ1週間かけて作ったものだそうだ。
料理について話すときとてもうれしそうで、心底好きな料理をのびのび楽しんでいる様子が見て取れた。 あとで判明したことだが彼は宮古島では夙に評判だった『A-Dish』でシェフを務めてきた飯島さん。
2011年6月に念願だった独立を果たしたのだとか。 ナナさん、びっくりでしょ。
  彼に他に美味しい店はないかと聞くと「そうですね、『フィッシュタベルナ サンボ(イタリアン)』なんか私は大好きですけど」とのこと。今回の訪問はかなわないので、次回の楽しみにとっておこうっと。

『島バル PURAVIDA』平良市字東仲宗根18(市役所から第一ホテル前を通り過ぎてすぐ左側)
18:00〜24:00(日曜休)TEL.0980-79-0641
『Bar Think』いつも宮古に来ると寄ります。 2年ぶり。
いつも通り〆に『Bar Think』のドアを開けた。
モヒートを注文すると  「ウチのは《フローズン・モヒート》なんです」とのこと。
角氷もろともライムやミントをミキサーでグワングワン攪拌する。 なるほど香草をベストルでつぶすより香りの輪郭がはっきりするのね。
  「今回はどこで食事されるのですか?」
私はマスターにリストを見せた。
「ああ、いい選択をしていますね。 ただこの《U》という店はやめた方がいい。知っている限り最高で6万円を支払った人がいる。値付けは店の勝手だけど、やっぱりお客にひと言あっていいと思いますね」
確かに食材にせよ古酒にせよ高いものは限りなく高いわけだから、見栄を張って「カネに糸目はつけないから最高のものを出してくれ」なんて言わないほうがいいね。危ない危ない。
伊良部島の海 翌朝はどんよりした天気に戻った。
この日、気象庁は沖縄地方の梅雨明けを正式に表明した。伊良部島の『伊島観光』というショップでシュノーケルツアーをお願いしている。
  10時にショップ集合とのことなので余裕を見て8:50のフェリーにした。街が騒がしい。
この日は朝から宮古島、伊良部島のあらゆる港でハーリーが開催されるからだろう。
  そして夜にはロックフェスティバル。
  9:15佐良浜港到着。
半ば廃墟のような牧山展望台に立ち寄って、渡口の浜までドライブした。 台風の余波なのか南側の堤防には波が打ち寄せていた。
クルマで案内された中ノ島ビーチにも波が入っているため、ダイバー船は島の裏側(白鳥崎)に回っているのか一艘も見えない。
珊瑚が元気で密生している海中 さて秘密ビーチである。  島でもショップの人しか使わないという(たぶん昨年Iowaさんが案内された場所と同じだと思います)。
  うっそうと茂った木々や下生えの草を踏み分けて細いケモノ道を下りる。
  一緒のツアーになったカップルの女の子が大の虫嫌いだそうで「キャーッ!マジいや!なにこれっ!信じらんない!」と騒がしい。南の島では虫は何でも大きいの。 「今がほぼ満潮でこれから引いていきます。今日は中潮(なかしお)ですね」小さなビーチに下り立って準備運動とシュノーケルの使い方、サンゴを傷めない泳ぎ方などについて少しレクチャーがあり、まず1本目。入ってすぐに豊かなサンゴの林が広がっていた。インストラクターの陽介くんが、参加者の様子を見ながらゆっくり50分間かけて泳ぎ、いったんビーチに戻る。満潮でもこれだけサンゴが水面に近ければ、干潮時だとスレスレだろう。橋が完成して(いつになるか分からないが)観光客が大勢渡ってくるようになればこれはどうなってしまうんだろうか。
浅い所も珊瑚がいっぱいです。 10分間の休憩後、続いて2本目。別のルートをまた50分間近く。
アラカン(=around 還暦)のオジさんにはとてもコタえたぞ。  最後はシュノーケルを外し、プカリ背泳ぎ体勢になってほうほうの体(てい)で岸まで戻ったぐらい。
  ショップに戻って別料金(500円)で社長の奥さんが作ってくれたソーキそばをいただく。
うわっ!これは実に旨い!運動をして空腹だったことを差し引いても掛け値なしの旨さなのだ。
『丸吉食堂』の宮古そばとは味付けは違うけれど、間違いなく上等。 そしてそこに添えられたヒミツの自家製調味料を入れると…ありゃ何だ?
この別物の旨さ!もう箸が止まらなくなって汁は全部飲み干してしまった。
  帰り際に清算しながら「あのヒミツ調味料を分けてもらえませんかね?」と懇願したけど量が作れないために販売できないのだそうだ。『伊島観光』を使うときは是非お試しあれ。
下地島の飛行訓練 見送ってくれたスタッフたちに手を振ってお別れし、下地空港17エンドに車を急がせた。
運よくANA機がタッチアンドゴーの訓練をしていたからだ。 コバルトブルーの海の色を機体の腹に映しながら下りてくるシーンを撮影しようとカメラを構えていたのは10人程度だったろうか。
フィルム一眼を置いてきたことを激しく後悔した。
  コンデジだとシャッターを押してから読み込み書き込み時間が遅くて、1回の進入に対してせいぜい2回ほどしか写せない。 
こいつは切ないのだ。
  この下地空港は維持費が年間約5億円もかかるという。 現在では《フライトシミュレーター》がかなり精巧になってきて、必ずしも実地訓練のための空港は必要とされなくなったそうだ。
JALが撤退し、ANAも来年以降の利用計画は現在のところ《白紙状態》という。
  この風景が撮影できるのはもしかすると今年限りになるのかも知れない。
ハーリーが終わったあとの港 残念ながらハーリーには間に合わなかった。
佐良浜港に戻ると祭りのあとの気だるい微熱が残っている中を、島の人たちが三々五々家路に就こうとしているところだった。
  数艘のサバニはすでに陸に引き揚げられ、その周りを子供たちが駆け回り、赤ら顔のオヤジたちは誰かれ構わず肩を叩いては大声で笑っている。 ああ、来年もしまた来ることができれば祭りの熱狂の中に少しだけお邪魔させてください。
 
帰りのフェリーなど念頭にないままブラブラしていたので、次の出航までひどく時間が空いてしまった。 窓口で尋ねてみたら高速船の積載車両に余裕があるということだったので振り替えてもらった。 フェリーだと宮古島まで25分かかる行程も、こちらは15分で済む。
「ぼうちゃたつや」の料理達
  ホテルで器材をすすいで物干し場に掛けると、もう夕食の時間が迫っていた。
2年ぶりの『ぽうちゃたつや』。予約の時にお願いしていた通りカウンターの隅に案内された。
大将の流れるような手さばきを眺めるにはここが特等席なのだ。 宮古島産パルダマ(水前寺菜)おひたし。紫色の汁を残したら大将が「その汁にはアントシアニンがたっぷり含まれているよ」と笑って飲み干せと促す。
  ブルーベリーと一緒ですね。眼精疲労、肝機能回復、抗酸化作用、確かにどれも私には必要だ。
刺身盛り合わせ、ガンモと食べ進めながら〆にアーサ茶漬けを。 時期を外れたアーサだが、今年は大量にストックしていてくれたそうで有難い。磯の香りが鼻腔をくすぐる。  ただね、一度生アーサをいただくと乾燥モノに手が出なくなるんです。
  この夜は「沖縄 慰霊の日」にあたっていた。 67年前、沖縄戦では24万人の人が亡くなった。
中には名前さえ分からない犠牲者もいる。 今ではそれさえも知らぬげな観光客が大挙して沖縄を訪れるようになった。  おかみさんが厨房を残してすべての明かりを落とし、ガラス瓶に入れたろうそくを置いて回った。 ともし火は静かに揺らめいていた。
『Bar Think』のお酒達  夜風にあたりながら今夜もまた『Bar Think』に立ち寄ってしまった。
モルトやラムにはちっとも造詣がないけれど、マスターに勧められる酒はどれもが唸るほどに味わい深い。浜松の本店は今年で20周年を迎えたそうだ。宮古島の支店も11年目とか。 シェイカーを振る姿を眺めていると、さぞや名のある店で修業されたのだろうと思わせる立ち姿に見惚れる。
3日目の朝、目覚めると快晴。ようやく夏空らしい風景になってきたぞ。早起きしたので(トシをとったせいじゃないと思いたい)朝食前にパイナガマビーチまで散歩しようと考えたことを、半ばぐらいまで歩いたころに後悔する。 やたらに暑い。
『島おでん たから』の奥に広がっていた猥雑な路地は、下里大通りを公設市場から平良港までズドンと通した一本の道路によってアッケラカンと明るくなってしまった。
何年か前に『たから』からアトールエメラルドに抜けようとして細い路地に迷い込み、どうしてもたどり着けずに散々歩かされたことが懐かしい。
朝食後とりあえず池間島に向かった。
通称「池間ブロック」フナクスビーチのそばには車が10台ほど置けるスペースが整備され、トイレも設置されていた。 隣に建築中らしい建物の骨組み。いままで目印のブロックからビーチを目指すと、海岸沿いの高い土留め擁壁から下りるのに苦労したが、今は駐車場から下りることができるようになった。
池間島・フナクスビーチの様子
島尻マングローブ林のトイレ島尻マングローブ林。 どうしてトイレの前に「島尻マングローブ林」と彫られた石碑があるのか?そこで最初の文字を手で覆い隠してみた。「尻マングローブ林」となって少し納得した。 ホテルにいてもしょうがないから早めに出かけたところが、昼食まで時間を持て余す。仕方がない。行き当たりばったり、カーナビに「植物園」と打ち込んでみた。
このカーナビはどういうわけか農道とか未舗装の道路とか案内するのが好きみたいで、おかしな道を散々運転させられる。
植物園は…うん。
何の目的でつくったのか分からない。植えられている樹木に名札さえもついていない。
丸吉食堂の島そば
『丸吉食堂』で軽く昼食。さすがガイドブックに掲載されていないのにお客はひっきりなしに訪れている。あっ!前回ニンニクの香りが薄かったので「ニンニク多めにね」と注文するのを忘れた。



  今回の泳ぎおさめは新城(あらぐすく)海岸とあらかじめ決めてあった。
急坂を下りていくと左手に駐車場が整備されているのが見えたが、下り切る前にみよしや側の駐車場に誘導された。フィンを付けて泳ごうとしたがどうにも脚が重い。 昨日50分×2本泳いだシュノーケルが効いたらしい。  諦めてフィンを外す。
  ちょうど魚のお食事タイムに当たったか、海の中にはこれまでにないほどの数の魚が見られた。
すごいね。 ちょうど干潮に向かう時間帯だったので徐々に泳ぐ場所が狭くなってきて早上がり。
  みよしやの真っ黒オヤジさんと少し話をする。
「宮古島はさ、たいして観光資源もないから何とかしてこの《海》を守っていかなければならないわけ。サンゴを踏まないで!魚を獲らないで!色々叫びたいけど相手はお客さんでもあるわけで…」
ふ〜む。大変だよね。 観光客は誘致したい半面で、あまりたくさんの人が訪れたら海が荒れるという二律背反。  「だからさ、いまわれわれが運動しているのは、ライフジャケットを着用しなければ遊泳禁止にするということ。そうすれば少なくともサンゴに足を着くことは少なくなるだろうし」
女の子から呼ばれたオヤジさんは写真を撮ってあげるために、そう言い残して走り去った。
シャワーを借りて身体を洗っていたら、隣に来た70歳は超えた闊達な男性が話しかけてきた。
「去年までずっと座間味島で、今年初めて宮古島に来たのだけど、島の人は親切だし海もきれいで気に入ったよ」 耳が少し遠いようで私は大声で話さなければいけなかったが、できるなら宮古島だけでなく伊良部島にも渡ってほしいと、『伊島観光』を紹介しておいた。
「おお、ステキな情報をありがとう」 まだ数日は滞在されるようだったが、果たして島に渡れたのだろうか。

新城海岸の海中の様子

『志堅原(しけんばる)』のミーバイマース煮 その夜は『志堅原(しけんばる)』を予約しておいた。 初めて伺う店ではある。
ジャズが流れる結構カジュアルな感じのカウンターに陣取った。勘に任せて注文する。
「マース煮は何ができますかね?」
「真鯛のお頭かミーバイですね」
「じゃ、ミーバイの《小》で」
  これが果たして大当たりだった。  ミーバイの出汁が融けだしたスープは抜群の旨さ!
塩も控えめで箸が止まらなくなる。 刺身に添えられたワサビにもひと工夫してあった。
どうやらワサビの茎も切って塩麹と一緒に叩き込んでいるようだ。これが辛いの何の。
『Bar Think』のボトル 最後の夜も『Bar Think』に立ち寄ったが、何しろ階段を下りるのがツラい。太もももふくらはぎも強烈に筋肉痛だ。壁に手をつきながらヨロヨロ下りた。
 すると階段を下り切った向かいに「車いす、介護用ベッド、歩行器」の看板を見つけて大笑い。
  ホテルでシャワーを浴びて、夜更け、1階のパソコンで調べ物をしにエレベーターに乗った。
3階で誰かがボタンを押しているらしく、扉が開く。エレベーターに乗り込んできたのは、チェックインの時に対応してくれたサトルくん(仮名)だった。
そう、会話の語尾が「しますぅ〜」と持ちあがるまつ毛が長い彼である。
「こんばんは」「あ、こんばんは。どうもぉ〜」やっぱり持ちあがった(笑)。 サトルくんはスッとエレベーターの箱の奥に入ったようだ。
扉が閉じて再び降下が始まった。
「…ステキだなって、思っていたんですぅ」
背後から思いつめたような声がした。
そのひと言が、他の誰でもない私自身のことを指しているのだと気づくまでに数秒かかった。 「え?」 ふり返るとサトルくんは気まずそうにうつむいた。
「ホテルのドアをスッと入ってきたときから…」今度は語尾は上がらなかった。消え入りそうな声だった。
ほどなく1階に到着して扉が開くと、サトルくんは私の横をすり抜けて小走りにスタッフルームに駆け込んで、そうして二度と出てくることはなかった。
  私は少しの間、呆然とそこにたたずんで、パソコンでの調べごとなどすっかりどうでもよくなってエレベーターの上りボタンをそっと押したのだった。
空港で飲んだビール チェックアウトの朝、サトルくんの姿はどこにも見えなかった。
他のスタッフが「何も清算するものはありません」と、私の手からにこやかにルームキーを受け取る。
 私は何か言い残したような思いを引きずったままレンタカーを返し、早めに着いた空港でビールを頼んだ。
もしかすると彼は、人が多い東京だったらもう少し暮らしやすかったのかもしれない。
でも彼は島での生活を選んだ。 そうだよね、あなたにとって、ここが《生まりずま=生まれた島》だものね。切ないな。
身体の重さも手伝って、何だかしたたかに酔ってしまいたかった。
泡盛のミニボトルを追加して、梅雨がすっかり明けた宮古島の空を眺め上げながら、私は手のひらを刺すほど冷えたグラスを握り続けていた。(了)
 
Re: うまりずまの純情 あじまー - 2012/06/28(Thu) 21:21 No.4738
 コアラさん、梅雨明け直前に宮古に行かれ、まったりと楽しまれたようですね!
宮古への思いは、私も強いですw  今夏は無理かもしれませんが、計画だけはいつもしています。 コアラさんが得たであろう体験を、宮古の地・風土を感じたいです。

Re: うまりずまの純情 コアラ - 2012/06/29(Fri) 05:54 No.4739

下地島の海と飛行機 あじまーさん、宮古島は訪れるたびに新しい発見や楽しみがありますね。
自分の年齢を考えてみたら、あと何回沖縄に通えるのか。そう思うとですね、他の島ではなくて、やっぱり次も宮古島に行きたいな〜と願うのです。
海の美しさもさることながら食事がどこもおいしいってのはポイント高いっす(笑)。

Re: うまりずまの純情 ナナ - 2012/06/30(Sat) 00:09 No.4740
コアラさん、海も食も十二分に楽しんで来ましたね〜 
今回のレポートは静かな余韻が残る文章ですねぇ。 哀愁感さえ漂っているかのような・・ どこかに「老い」(?)を感じて 松尾芭蕉の心境かしら、はてさて もう無理は禁物です(笑)
年寄りの何とかになるわよ〜 お店情報は濃ゆいですねえ〜^▽^ さすが! 島バル PURAVIDA(プラヴィダ)興味津々です。豚のリエッタ。なんだか雰囲気だけでおいしそう。
A-Dishのシェフが独立されたんですね!!それは「ぶっとぶ」お店なワケね。
紹介されたイタリアンも行ってみたくなります。 そんなにあっちもこっちも無理だわ><
しかしサトルくん(仮名)、ですか? コアラさんに「ほ」の字??(←わー死語!) どーする?

Re: うまりずまの純情 コアラ - 2012/06/30(Sat) 05:47 No.4741
ナナさん、おはようございます。
 去年のやけくそでハイテンションなレポートの続編を期待してた?(笑) ね、
行ってみたいお店が増えたでしょう。PURAVIDAはまだ全く宣伝しないで、地元の人と限られた常連さん相手に食事を提供しているみたいで、ふらりと訪れた私にびっくりしていたみたい。
そっち方面の勘は鋭いですからね(笑)
一方で下里のあたりのいかがわしい(本当はそうでもないんだけど)雰囲気の街が寸断され、寂れていく光景はすごく悲しかった。古いものが壊され、こうして『志堅原』や『PURAVIDA』のような新しい店がどんどん勃興していくこと自体は自然な新陳代謝なのかもしれませんが、たとえば檀一雄の『火宅の人』の「きりぎりす」の章を読んだ時のような一抹の寂しさを覚えます。
  そうね、それは私自身の「老い」に重ねて見ているのかもしれません。
サトルくん(仮名)はね、私に惚れていたというより、「自分をここから連れ出して」と私には聞こえたですよ。 でもね、ここはあなたの《うまりずま》。ここで生きていくのが幸せなんじゃないのかと、故郷を逃げ出してきた私には思えるんです。 それに私にはどうすることもできない。
なんて声をかけてあげればよかったのかと、今でも考えます。

Re: うまりずまの純情 Iowa - 2012/06/30(Sat) 14:47 No.4742

いやー本当にリアルタイムで梅雨明けだったんですね。
そして、胃と肝臓を含め体力の限りを尽くして楽しまれた様子がよく伝わってきました。
伊良部島の秘密ビーチでのシュノーケリング。堪能されましたね。
実はストリートビューで見ると入口が写っているんですよ。橋が掛かってしまうと池間島のフナクスやカギンミのように秘密じゃなくなってしまうと思います。
まだ手つかずの内にあのサンゴの海をもう一度泳ぎたいものです。
「島バル PURAVIDA」。美味しそうです。で、A-Dishの方はどうなってしまったんだろうか。
昨年アルケミストで取り寄せて食べたときにはもうシェフが変わっていたということですね。
そして、「志堅原」「フィッシュタベルナ サンボ」。しっかり記録させていただきます。
新しい店情報ありがとうございました。 サトルくん(仮名)。とりあえず、今度行って顔を合わせたときにどうしよう。

Re: うまりずまの純情 コアラ - 2012/06/30(Sat) 16:08 No.4743
Iowaさん、本当にすごいサンゴの群生でしたね。もう少し晴れ間がのぞいてくれたらな〜と思うのは贅沢なのでしょうか。
しかしショップで泳ぐのがあんなにハードだとは思ってもいませんでした。へばりました。
普段どれだけ運動不足なのか、よ〜く思い知らせていただきましたよ(笑)。
今回新しい店を攻めてみて、宮古島で行きたい居酒屋の順位が変わってしまいました。PURAVIDAの飯島さんは、自分が好きな料理を作って好きな人に食べさせたくて独立したんじゃないかなと思います。料理を褒められてあんなに嬉しそうに語る人もなかなかいません。
台風に続いてハーリーで漁がままならなかったせいもあるでしょうが、志堅原も生モノよりマース煮のような調理されたほうが旨かったですね。
私も次回、楽しみにしています。
サトルくん(仮名)? ふっふっふ。私が一部、創作を入れていないとでも?(笑)

Re: うまりずまの純情 mini5518 - 2012/07/02(Mon) 11:32 No.4744
コアラさん、おかえりなさいませ。
梅雨明けを狙ったかのような訪宮古、日頃の行いのおかげですね?
やっぱり写真で見ても本島とは全然違いますね。いつかは宮古に行きたい...
今年のレポートは去年とは一味違いますよね、どこまでがレポートでどこからが小説なのでしょうか? いよいよ物書さんデビューでしょうか?

Re: うまりずまの純情 コアラ - 2012/07/03(Tue) 09:29 No.4745

>mini5518さん いや〜。帰ってきたら、本人もどこまでが現実でどこからが夢だったのか判然としなくなっちゃいました(笑)。
宮古島、ステキでしょう?ぜひ行ってみてください。海もきれいですが料理もおいしくて。
それに何かのんびりしてしまうのです。せかせか運転しなくなります。 観光できる場所も少ないですけどね。ビーチで泳ぐでもなし、ボーっとできるのは私にとって極楽なんですよ(笑)。

Re: うまりずまの純情 あおママ - 2012/07/05(Thu) 08:48 No.4746

コアラさん、素晴らしいレポート。感激します。 梅雨明けの宮古島も是非行ってみたい。
ゆっくり時間をかけてそこに住む人達の時間を知ってみたい、そんな気分になりました。
  さらっと観光程度で流してしまうのは、ほんともったいないことなんだなぁ、と思いました。
多謝。

Re: うまりずまの純情 コアラ - 2012/07/05(Thu) 09:37 No.4747

>あおママさん レスありがとうございます。
あまたある沖縄の離島の中でも、宮古島はリピーターが多い島の一つです。
私も毎回「ただいま〜」って感じで空港に降り立ちます(笑)。
みよしやの真っ黒オヤジさんの言葉じゃないですが、観光する場所は限られています。
でも逆に、のんびり過ごすにはぴったりのビーチがたくさんあります。
そこでは忙しい日常から切り離されて、ボーっと呆ける夢のような時間を過ごすことができます。初めて訪れた人は何を差し置いても真っ先に与那覇前浜に案内します。
あの数kmも続く真っ白なパウダーサンドのビーチに足を踏み入れたら、たいていの人は言葉を失って、悩みも煩わしい日常もすっかり忘れてしまいますから(何回か実証済み)。
それに料理が美味しいってのは何物にも代えがたい。どちらかといえば沖縄の郷土料理というより和食に近い感じがするのです。どうしてなのでしょうね?ダシの引き方が丁寧な感じです。
ぜひ宮古島に行かれて、何もかも忘れてゆっくり過ごしてください。
10月中旬までなら余裕で泳げますよ。

Re: うまりずまの純情 はみ - 2012/07/05(Thu) 11:03 No.4748
コアラさん、晴れたんですね〜〜!!よかった♪ ゆっくりと島時間を味わった様子が伝わってきて、こちらも旅行気分を味わわせていただきましたm()m。
そして読んでるとやたらおなかが空くわ〜(^^;)
慰霊の日、お店ではそうするんですね。印象深いです。 そしてサトルくんが気になりますぅ。いつか再会編をぜひ!

Re: うまりずまの純情 コアラ - 2012/07/05(Thu) 12:24 No.4749

>はみさん 一昨年は宮古島到着前日に梅雨が明け、今年は到着当日に明けました(正式発表は翌日でしたが)。私が行って晴れたことで《どんなに日ごろの行いが悪くても、晴れるときには晴れる》ということが立証されました(笑)。 しかし危なっかしい。
>読んでるとやたらおなかが空くわ〜 書いているほうもおなかが空きます。
そしてアレも食べておけばよかった、アレもメニューにあったのに…という後悔ばかりが湧き上がります。交換用の胃袋が販売されたら買って持っていきたいです。
シュノーケルセットと交換用胃袋は宮古島行きの標準装備になるはず(笑)。
サトルくんは、えと、Iowaさんにお任せしましたんで。

Re: うまりずまの純情 kaotti1 - 2012/07/12(Thu) 21:24 No.4783

コアラ師匠・・・・私、サトル君の事が一番気になってしまってコメント書き辛かったのです。
気になるわ〜。可愛い子だったんだろうか、〜ぅの声はどんなんだろうとか。
もしかしたらコアラさんに抱・・・ハッΣ(-0-:) いやぁ、なんにしても素晴らしい宮古です。
色々体験出来ますしね。 新しいお店も色々出来ていますね。宮古も激戦区でしょうか。
そんな中で昔からのお店が姿を消していっているようなところもあり・・・
今回行ったらパイ食が閉まっていたように見えたんです。他にもちょこちょこ。
旅行記読ませて頂いて、平良も師匠のようにのんびりお食事やお酒を楽しみたいなと改めて思った次第です。

Re: うまりずまの純情 ナイチャー小林 - 2012/07/12(Thu) 23:08 No.4787

今丁度このレポページを作成中です。 相変わらず文が面白い、というか上手。
勉強になります♪
というか、宮古、すっかりホームグラウンド風ですね。 私もすぐにでも行きたいです。
現在、自分も沖縄で何処がいい?って聞かれたら,個人的には宮古って答えると思います。

Re: うまりずまの純情 コアラ - 2012/07/13(Fri) 08:36 No.4788

>kaotti1さん …そして空が白み始めるころ、遠慮がちにドアがノックされ… って、私はそっち方面の趣味はございませんのであしからず(笑)。
色白のかわいい子でしたよ。幸せに生きていってくれたらいいな。
残念ながら名物だったパイナガマ食堂は閉店してしまったようですね。
以前定宿にしていたペンションクルーとは目と鼻の先で、パイ食で飼っていたニワトリの高らかな声で毎朝叩き起こされていたものです。飼い犬も合唱してね。クワーッ、ケコケコーッ、ウワンウワン…(笑)
旧平良市街地の食事の楽しさにハマってしまうと、どうしても郊外のリゾートホテルには足が向きません。来年は3泊じゃなくて4泊、いやいっそのこと1週間ぐらい滞在したいです(お金が続かないかも)。

Re: うまりずまの純情 コアラ - 2012/07/13(Fri) 08:48 No.4789
>ナイチャー小林さん 駄文をお褒めいただき、光栄です(笑)。
本当は行ってみたい島がたくさんあるのですが、どうも宮古島にハマってしまったようです。
年に2回でも行きたいほど。 あのサンゴと海は大切にしていっていただきたいですね。
観光客のワガママですけど。
伊良部島でも大きな問題になっていましたが、オニヒトデがすごい勢いで増え続けていて民間レベルでの駆除が間に合わないそうです。昨年ダイビングのインストラクターさんがオニヒトデに刺されて亡くなったでしょう?心痛みます。
そろそろ行政が動いてくれなくては、と思います。
 

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